蛙の目借時

なんとなくなんでもなく

ごきげんよう

きりんは何処

 

 

 

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 大河ドラマ麒麟がくる

 

 昨日のラストの興奮のままに書き殴ったのは置いといて。今日になってもまだ余韻に浸っております。書き殴ります。

 明智光秀が主役。織田信長への謀反の、三日天下の光秀が主役~? と、決まった頃には、ふーん、くらいの気持ちでした。
 始まった頃にも、ふーん、くらいの気持ちでした。光秀の若い頃というのは資料があまりないそうですね。青春期の十兵衛くんは、フィクションで、何者でもなくて、道三のパシリとしてあちこち出かけて無理難題になんとか応える、がんばる若者でした。
 日曜日には大河ドラマ、というなんとなくの習慣になっていたので一応最初から見てはいましたが。「いだてん」にドハマリして面白かったしねえ。
 道三がすごいかっこいい~! なんかキャラづくりが面白いな~、というあたり。帰蝶たんが、なんかすごい重要な役柄だな、とびっくりだったり。ほんとにねえ。キャストの急遽変更とか撮影しなおしとかとてもとても大変だったろう。この役を逃した人よ。あまりにももったいない……。まあそれはそれとして、ほんと、帰蝶とか、駒ちゃんとか、ラブコメか? みたいな十兵衛くんの日々は正直興味なかったです。

 

 しかし信長さま登場してくる。あ。と、あまりにも遅ればせながら気が付きました。光秀主役じゃん。ラスト本能寺の変に決まってるよね? ラストじゃないにせよ、一番の大盛り上がりは本能寺の変だよね!? 
 私は信長さまが大好き。なので、光秀は嫌いだったのです。信長さま殺してんじゃねーぞこら。みたいな気分だったの。でも、この大河では、二人の確執が、がっつりドラマのメインになるよね。なるしかないよね。
 信長さま登場して、いきなり父上に、プレゼントに松平の首持ってきてにこにこしてる姿に痺れました。こ、この、この人、ヤバイ人。。。ぐっと前のめりになって見るようになりました。

 私は、高校生の頃から、光秀が信長さまを手に入れたくて、どうしても手が届かなくて、嫉妬の愛憎で殺したのだ。という個人的脳内二次創作の愛憎物語を持ってました。 
 きりんを見て行くごとに、あああああ~信長さまヤバイ。十兵衛くんがんばれ。の気持ちで、すごく、二人の友情の深まりと、確執への変化と、むしろ信長さまが十兵衛くん大好きすぎなのでは??? という新たな開眼で、めちゃめちゃ面白かったです。
 さすが、本気のプロの作り上げるものは違う。マジで演技うまいひとが演じて見せてくれる男同士の激熱激重愛憎劇の凄まじさに、完全に参りました。素敵だったよ……。

 

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十兵衛くん。厳しくなってまいりました。



 本来ならオリンピックもあり、途中コロナ禍もありで、通常の大河より短かったのかな。44話。
 そんな中、かなり繰り返し描かれたのが、金の話だったのが印象的です。戦には金がかかる。人を動かすには金がかかる。鉄砲を買う、作らせるには金がかかる。暮らしていくには金がかかる。朝廷の維持にも金がかかる。
 商人の台頭とか、貨幣経済みたいなのができてきたのか~というのを感じられました。史実にないオリキャラの駒ちゃんとか伊呂波太夫とか、東庵先生の自由な立ち位置での見せ方が成り立つのも、そういう背景があるんだなあと思いました。

 十兵衛くんが、信長さまの家臣になる前の、資料乏しい時期だからこその、あちこちお出かけとかあちこちで人と関わり、相手の人物像をうつしだしてみせるのも、面白かったしうまかった。
 結果、いろんな人との交流、感情、打ち明け話や友情、期待からの、積み重なって積み重なっての、本能寺の変へいたる、というのがよく見えました。

 沢山の人と関わって、十兵衛くんが変化していくのが面白かった。
 信長さまも。
 本当に最初は小さな、地方、美濃一国、明智の庄のことを考えているだけだったのに、天下が見え、麒麟のくる平らかな世の中へ。と。大きな国を、と。そんな変化が、ただの夢ではなくなって、けれどどんどん個人としての平和なんてなくなっていく感じ、凄かった。
 信長さまの有能っぷりが凄まじくて、届かないはずの天下に届いてしまったのが、むしろ不幸。。。

 海で魚をとって、みなにわけてやって。喜んでくれる。という、最初の出会いのままであれば、どんなに楽しかったであろうね。けれど信長さまは漁師ではなく一国の主になったし。十兵衛くんも武士だった。幕府を中心に世を治める、という筋を求めたし、その筋に納まりきる信長ではなかった。。。
 有能すぎて無理~。人の心がわからない信長でした。。。大好きな人を喜ばせたいけど、自分のことしか考えられない。自分がよかれと思えば相手にもそう、という決めつけ。権力のトップからの決めつけは、パワハラなんですよ;;

 

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一緒に夢をみていけたらよかったのにね;;


 そんなこんなの愛憎の果て。信長にも十兵衛にも相手しかいないほどに、二人して駆けのぼってしまった。帝は、信長が月へゆくと言ったけれど、そこへゆかせたのは、道三からの帰蝶からの十兵衛だから。月へゆく樹を守るのも切るのも、十兵衛くんしかいなかったのだ。。。


 そんなこんなの愛憎を、染谷将太長谷川博己が演じ切って見せてくれて、ほんとーーーーによかった。凄いよかった。二人とも本当に顔つきがまるで違っていった。
 特に染谷くん。最初キャスティングを聞いた時には、なんか、こー、信長さまってもっとこう、きりっとかっこいい! ってならないの? なんて思ってしまった自分を恥じるよ。凄かった。ほわんとした若者、けどほわんとしたまま人を殺す凄味があって。後半にはマジ信長、この人の前で下手なこといったら殺されるマジ殺される死ぬ、という迫力、凄味を見せつけてくれた。
怖かった。。。最高だったわ。
 キャストコメントを読んでも、信長になりきって、というか憑りつかれたように、演じきってくれたんだなあと思う。本当に凄い、うまい、素晴らしい信長像を見せてくれてありがとうございました。好き。


 ハセヒロ十兵衛くんは、終りのメッセージでもぜひ番外編を、みたいに言ってて。やっぱもっと長くもっとちゃんと、できれば、という思いもあるのかなあ。大変だったのでしょうね。
 
 でも、私は、特に番外編を望む気持ちでもない、かな。最高の本能寺の変を見たので。あの炎で焼き尽くした、遺体も見つからないほどの信長さまの昇天。十兵衛くんも燃え尽きただろうと思えたから。
 炎の中で傷だらけで自害して、蹲った信長さまの姿は、胎児に戻ったかのよう、という感想などTwitterでみかけて、ほんとうにそうだな~と思えた。信長さまはさあ、十兵衛と共に死ぬ、と、愛憎愛愛の中で死んだのだと思う。いい顔してたもの。好き。
 だからもういらない。二人の愛を見届けた気持ちだから;;

 どのキャストも最高に楽しませてくれた。玉三郎の帝はあまりにも帝だった。麗しい。最高だった。吉田鋼太郎松永さまもほんと十兵衛くんとのやりとり面白かった。あの時代の足利幕府というのを感じられたのも面白かったし、十兵衛くんがその最初の出会いから惚れこんでしまった、美しい将軍を向井理が演じたのも素敵だった。
 大河ドラマって、一年という時間をドラマの中、キャストのみんなと生きる時間を味わうものだと思う。今回は、通常の一年、以上に、長く、深く、このドラマの時間を共に生き延びた、燃え尽きた、の気持ちです。ありがとう。楽しかったです。