蛙の目借時

なんとなくなんでもなく

ごきげんよう

ドラマひとりごとメモ。「MIU404」


 金曜ドラマ『MIU404』(TBS系) を毎週楽しみに見ています。昨今の社会問題なんかも実に見事にもってきてる、刑事ドラマで社会派ドラマで、バディもので、すごく面白い。楽しい。楽しい、って、言ってられないんだけど。
 昨日、第8話の副題は「君の笑顔」。見てる途中からあまりに残酷でぐるぐる頭が爆発するので書く。自分のぐしゃぐしゃメモ。まとまりもなんもなく推敲ゼロ。


 リアルサウンド映画部のこの記事につきるかもしれない。でもまだ自分の気持ちおさまらないので書く。

realsound.jp

 

 

 前回、志摩の過去のトラウマというか、相棒をなくした話があったので、お、今回は伊吹くんの過去ですか。と見てました。
 伊吹が俺の恩人♪ と慕う、ガマさんが、連続猟奇殺人かと思われる事件の被害者と接点があったので、伊吹は俺たち持ってる~って志摩と一緒にガマさんの話を聞きに行く。ガマさんは引退した刑事で、今も弱者に寄り添って、って感じ。小日向文世が演じてて、これまでにもちらっと出てきてはいて、伊吹がすごく懐いてるのはわかってる。

 でも、最近妻を亡くしたあと、ガマさんにも痴呆の兆候があるみたい。子どものいないガマさん、施設へ行くしかないだろうなあという所、伊吹は、ちょっと気になってるちょっとわけありのハムちゃんて女の子も誘って、独り者同士、三人で暮らすっていうのはどうかな、みんなにとってそれがいいんじゃない~? って部屋探そうとしたりしてる。

 あー、今回は老人問題なのかな。独りになった老人。血のつながりはなくても、疑似家族みたいにやってく、って、そういうのもいいじゃん、みたいな話になるのかな~と、思ってた。

 しかし、連続殺人事件ではない、手口は似てるけど違う部分がある、と指摘がある。これが、中堂さんなんだよねーっ。「アンナチュラル」繋がりだ。中堂さん、ちゃんと検視官として今も元気にご活躍で何より。わ~^^ と、喜んでたら。

 犯人はガマさんだったとわかってしまうんだよ……。
 妻は病死や事故じゃなくて、ひき逃げされたんだった。事故にガマさんも巻き込まれて、その後遺症で脳機能に障害が出て。薬で治るかどうかは五分五分。一時は事故の時の記憶をなくしていたガマさん、思い出してしまう。
 自分が相談にのってやったりした男。でも再犯繰り返し、捕まっては出所しての男。そいつがまた出所してきた時、ガマさんはもう刑事を引退していて、これからは病気を抱える妻と、ゆっくり余生を過ごそうとしていたの。だから、俺はもう刑事じゃないんだ、って、男の泣き言に取り合わなかった。
 その、逆恨みで、そいつはぶつかってきた。

 並んで歩いていた妻が轢かれて、自分も倒れて、運転席の男にやめろーっていったのに、男はタイヤの下の妻をバックしてもう一度轢いて逃げていった。ガマさんは動けなくて見てるしかなくて。

 一時はなくしていた記憶が戻り、捕まっていないひき逃げ犯を自分が裁くことを決めたガマさん。かつて知っていた連続殺人に偽装して。というか、クリスチャンである妻はきっと許すというだろう、ということを承知の上で、その人間の屑を、獣として処罰、殺す、許さないと決めたガマさん。偽装は犯行の隠蔽と、処罰の意味合いと、両方ちょうどよかったから、かな。

 男を攫ってきて、手の指を切って。許してくれって泣きわめく男に、ガマさんは「許さない」って何回も言ったんだって。
 許さない。
 許さない。

 許さないよ。許せないよね。身勝手な男。何度捕まっても更生しない男。人に甘えて、逆ギレして、絶対に取り返しのつかないことをしておきながら許してくれなんて言う男。
 許さない。
 ガマさんが許せないのは当然。

 それでもその一線を越えて欲しくなかった。

 ドラマだからさー。CM挟むわけで、う、これ、嘘でしょ犯人ガマさんてことなのか嘘でしょ、そんなこと、嘘だろ。と、気づいてしまって途中から息が苦しくてたまらなかった。

 伊吹がさー。ガマさんは俺の恩人♪ って、ガマさんのこと大好きなのがひしひしと伝わってきてるの。これまで見てて。俺んち貧乏でさ、舐められないようにオラついて腐ってた十代の頃に、ガマさんだけがまともに向き合って信じて更生の道を示してくれたんだって。伊吹はそれにすくわれて答えて今がある。老後の面倒は俺がみちゃおっかな~って思うほどに、心からガマさんを尊敬してる。伊吹の実の親がどうとかはわからないけど、でも実の親より大事にしたい人なんだっていうのが、伝わってきてる。

 でも本当は伊吹には志摩ちゃんが指摘する前に嫌な予感はあったんだろ。志摩ちゃんが休みの日にわざわざ伊吹の部屋にきて、ビール飲んじゃう、かる~くはしゃいで、お、なんだよーなんてなりながら、いつもと同じに、いつも以上に、チャラく喋ってみせて、でも志摩ちゃんに言われて涙目で大声で否定するのは、自分で気づきたくないことに気づいてるのをわかってるからなんだよね。
 こういう、この、あああこのー、綾野剛の繊細さが素晴らしく凄くて、ねえ。伊吹の心の内側が全部見えるように演じて見せてくれるの。伊吹のこと大好きになってるじゃん。見てるこっちは。伊吹と同じように傷つくしかないよ。泣いた。

 
 ガマさんの所へ、まずは一人でいって、違うよね? って聞く伊吹。ガマさんの前で、ガマさんの告白を否定して泣く伊吹は多分ガマさんに出会った頃の十代の子どもだった。
 ガマさんは初めて自分をまともに扱って助けてくれた大人で、恩人で、尊敬してて、憧れて、自分も刑事になろうって思って、そう思っていろいろ頑張り始めたんだろうなあって、すっごくわかってくるんだよ、見てるこっちに。


 人と人との出会いって、最初に会った時の感じがずーっとあるよね。学生時代の友達に会ったら学生気分でお喋りするし、職場つながりだったらそういう感じで。伊吹はガマさんの前で子どもだし、でも、そっかーガマさんも年をとったんだし、俺がしっかり力になってあげないと。って、そういう風に思ってたんだよ、ドラマの前半は。


 でも、ガマさんが殺人をしたと、わかってしまった。
 ガマさんの助けになんかなれなかった。ガマさんに救ってもらったのに、自分は何も、何もできなかった。

 ねえ、いつだったらガマさんを止められた? といって泣く伊吹は無力な子どもだった。泣くわ。

 ガマさんは自首じゃなくて逮捕にこい、って、無線で回りで聞いてるんだろう刑事たちに言う。伊吹のことはもう見ない。逮捕されていくとき、志摩に、「伊吹に伝えてくれ。お前は何もできなかったって」ってなことを言う。
 いつであっても止められなかった。許さなかった。
 それは残酷な突き放しだけど、伊吹に、あの時もしも、もしも何かもっと、というような後悔をさせないための言葉だったんだと思う。

 ガマさんは伊吹にちゃんと優しかったんだと思う。大事に思ってたと思う。
 でも、と思ってしまう。
 もしも本当に伊吹が実の子だったら。
 もしも。もしも。
 ガマさんは人情派刑事って感じで、沢山の道からそれた人々に、たくさん優しくしてきた人なんだと思う。伊吹だけが特別に、ってことではなかったのかもしれない、と、思う。伊吹にはたった一人の恩人で、ガマさんも当然すごく可愛がってたと思うけど。伊吹が心底たった一人の恩人! と強烈に懐くほどには、ガマさんにとっては、伊吹は、と。思う。
 もっと前に伊吹に、「お前は人を信じすぎる」っていってたの。あんまり無邪気に盲信的にガマさんを恩人だーって慕う伊吹に、おいおい、そんなに思われても困っちゃうな、って感じだったのかも。そんなに尊敬されるほどの人間じゃないよ、ってことだったんだと思う。
 ガマさんにとって家族は妻一人だったし、その妻が奪われた時、踏みとどまらせるほどのものはなかった。
 志摩ちゃんが、あなたは伊吹のために、全警察のために、踏みとどまるべきだった、みたいに言ったけど。それはそうなんだけど。
 許さない。
 許せないよ……。


 で。
 ここで、今回の中で中堂さんの名前、存在がちら見せされるのがなーーーーー。たまんねえ。
 中堂さん、「アンナチュラル」って、一つ一つ事件解決あったその中で、中堂さんのどうしようもない復讐心を、どうやって踏みとどませるか、そういう物語だったと思う。
 最低最悪の犯人を、それでも復讐して私刑にしてしまったら、いけない。
 中堂さんは途中までは、本当に大事な愛する人を奪われたなら、自分が殺す、と、心から信じ願ってた人だったんだよ。復讐を助けて、「よかったじゃないか」と、この上なく綺麗に静かに言える人だったんだよ。自分もそうする。犯人を見つけて自分が殺す。純粋にそう願ってた人。
 あの中堂さんの純粋な美しさは鳥肌たつほどで、すごくすごくすごく素晴らしかった。井浦新でよかった。本当に。ほんとうに綺麗だった。

 ガマさんの復讐が、隠蔽されずに発覚するきっかけを見出したのは中堂さん。
 同じだからだ。
 ガマさんのようになっていたかも。ガマさんが踏みとどまることができていたかも。
 中堂さんーーー……;;

 中堂さんには、チームになる仲間がいた。ガマさんは引退した刑事で、ひとりだった。伊吹は移動になったばかりで張り切って駆け回っていた頃の、事件だった。いつなら止められた? というのは、もう言ってもせんない後悔。伊吹なら止められたかどうかはわからない。そう思うとやっぱり、孤独な老人問題でもあったのか。もし本当に、疑似家族みたいになって一緒に暮らせていたら。ガマさんの許せないを受け止められることがあったのか、どうか。
 わからない。わからない。許せない。許さない。わからない……。

 

 別のドラマをちょっとつながり持たせて、なんてサービスはあんまりいらんわー。と思うほうなんだけど、今回は参った。最初の方では、お、アンナチュラル~。お、ムーミン大好きさん~、おお!中堂さん相変わらずクソがっていってるのか~~w わ~所長~、って楽しく笑って見てたけど。ガマさんが捕まる時にはだからアンナチュラルつながりに見せたのかと、どっと深みにはまりました……。

 まあもちろん、アンナチュラル見てない場合でも今作単体で十分に、伊吹のかなしみもガマさんの哀しみも、強烈にわかる。
 ほんとうに、サービスエンタメたっぷりで、でも容赦なくて、上手いドラマ作ってる~~~。すごいな。
 伊吹の休日の部屋~とか、志摩ちゃんが、ちゃんと相棒っていって手を差し出すとか、バディの絆が深まってる感もすごくよくて。もえるしかない(*ノωノ)
 刑事やってるってことは人の闇に沢山触れることなのかと思う。辛いこともいっぱいあって、けど、相棒がいる。相棒ができたという救いがあって、本当によかった。

 

 綾野剛、好き~というのはもともとあって、今回またその凄まじい演技力に参った。
 それに小日向さんだもの。伊吹の恩人~って時のひょうひょうとしたいいじーさんっぷり。それでもどこかつかみどころ見せない感じ。ちょっと痴呆気味になってあやういのかも、って時の、ふ、と虚無な混乱というか感情がなくなったような感じ、犯人を思い出し、許さない、と追い詰める完全にダークな顔。めちゃめちゃよかった。優しい人にもなれるし、でも人には人にわからない複雑な内面があるのがわかる、さすがの迫力。凄いなあ。役者だなあー。怖かった;;

 連続ドラマならでは、登場人物それぞれに人生があり過去があり今がある。そんな魅力いっぱい見せてくれて面白さが広がっていくのすごい。引き続きの事件がこれからどう展開して着地するのか、怖いけどめっちゃ楽しみです。生きていく世界は厳しく容赦なく酷いこといっぱい。でも、このドラマは、それでも人には少し優しく救いのひかりがある、と、願って見せてるんだと思う。ドラマだからさ。現実よりは夢を見せてくれてありがとうと思う。みんな、幸せになってね……。

 

公式のツイートのオフショットが癒し;;

 

 みんなほんと役者だなあ。うまいドラマが見られてしあわせです。