蛙の目借時

なんとなくなんでもなく

ごきげんよう

朝ドラ「スカーレット」見てました。


 朝ドラ「スカーレット」今日が最終回でした。
 半年、楽しませてもらいました。ほわっと全体的な個人的感想メモ。

 

 

 

 楽しませてもらった、とはいえ、最初の頃はあんまり好きにはなれないなあって思ってました。主人公きみちゃんの家庭が、あまりにも、キツイ。家族愛はすごくある、けれども、今の目で見るとあまりにも、父、じょーじの身勝手に家族が振り回され、けれどそれでいい、それが当たり前、といういびつな家族愛でねえ。昔は父親が何はともあれエライ、という価値観だったのかなあとか、いやそれにしてもじょーじは酷い、とか、見るたびにどんよりした気持ちになってねー。戦争帰りの父である、ので、また、無理もない、という気持ちにもなったり。


 それでも喜美子が大阪へ働きに出たことで、あの歪んだ家族から、もっとましな世界へいって、もっとましな常識を身に着けていった、自分が生きるということが、できるようになった、と、ちょっとほっとしたりして。

 だけど、また家に帰ってきちゃうんだなあ。うー。つらい。けど、ある程度成長はして、地元で仕事を得て、幼馴染の友達がいて。そしてそこでやりたい事をみつけて。それはそれでよかったね。ちゃんと修行して認めてくれる先生がいて。

 んでもまたそこで、珍しい若い女の子だからって職場のマスコットガールみたいな扱いで新聞に出ちゃったり。

 

 時代はちょっと昔なわけですが、正直今現在の社会での一人一人の生きづらさみたいな事も十分重ねて見えるように作られて、凄い、物凄く上手いと思うけど、上手いがゆえに見ててリアルに辛い、という気持ちも多くて、どんよりしちゃったり。

 好きじゃないなあと思いながらも、大体毎日見ていて、登場人物みんなに親しみもって、そして喜美子の生活も安定してきて陶芸の道を静かに追及していくのかなあと思ってたら。

 穴窯作って、火たいて昔ながらの自然釉で焼き物作りたい! という思いを爆発させる時。爆発させるというか、高温すぎて青白い炎になってんじゃねーかってなった時、震えたわ。凄い。芸術家の狂気が描かれてて。

 

 勿論私は芸術家の気持ちとかよくわかりませんし、何がリアルかとか知らないのだけれども、あの喜美子の凄まじさはひしひしと伝わってきて、怖かった。朝ドラのヒロイン見て「狂ってる……」とマジで独り言呟くとは。

 

 初めての穴窯の挑戦が失敗し、息子の将来の学費のために、ってこつこつ積み立ててきた貯金を、穴窯の薪代につぎ込もうとした喜美子を止める八さん。八さんが、今はひとまず穴窯はやめて、普通の陶芸でもっと名前売ってまたもっとお金貯めて、それからまた挑戦しよう、っていう提案は何一つ間違いじゃない。どっからどう考えても、八さんが言うとおりにした方がいい。
 子どもの将来を犠牲にしかねない挑戦なんて、やるべきじゃない。

 それなのに穴窯を諦められない、今やる、と突っ走る喜美子がもう、怖くて。喜美子、子どものことも家族のことも大好きで大事だっていう思いはすっごくある。だけど、やめないの。愛はあるのに歪みまくってた父じょーじと同じ、ってぞっとしたし。父じょーじを愛して許してきた川原家だ……って震えた。母、まつさんがねえ、じょーじを愛して支えてきたように、喜美子の暴走を温かく支えるんだよねえ。怖い。家族愛……。

 

 陶芸を教えてくれて、愛し合った八さんに向かって、八さんに足りないのは陶芸への情熱だとか自分を信じる力だ、とか言い放ってしまう喜美子。そして八さんは去り。穴窯で成功と言えたのは7回目の挑戦でした、となるのでした。


 芸術、怖すぎる。


 あんまりだ。
 火事になる恐れもあるような炊き方する、お金も家そのものだって失うかもしれない賭けを、7回もやれるか。7回どころじゃなくて、それが10回かも、100回の失敗かもしれなくて、そこに、突き進んでいく情熱、狂気を経ての、焼き物……。
 これはまあ、7回で成功した人の物語だけど。
 何回やってもダメだったりする人の世界もあるわけだよねえ。芸術……怖い。
 そんな芸術の怖さをまざまざと演じてみせてくれた喜美子、戸田恵梨香の凄味を思い知らされたのでした。

 

 そうして、静かに喜美子は家族を失って、一時は大家族だった家の居間、ちゃぶ台に一人で座って黙々とご飯を食べるシーンが印象的で美しかった。


 人は一人になってゆく。

 

 でも、新たに友達ができたり、死別ではなく離れた家族とは、また新たな関係が始まったりする。
 息子の病気という悲劇にも見舞われる。
 人生、いくつになってもどんなふうに変わるかわからないものだなあ。

 たくさんの人がいて、離れたり再会したりしていく。楽しいことも沢山。苦しいことも沢山。生きている限り人生は続く。


 最終回、昨日のみんなの陶芸展というハレの日のあと、息子を失ったあと、それでも時間は続き、特になんでもない、だけどそれが特別な、日常、まいにち、という普通であることが特別な一日、を見せる終わり方だった。小さな優しさが愛しい。

 

f:id:itiharu:20200328201856j:plain

喜美子の炎、スカーレットね。(画像は公式ツイッターからいただき)

 人生は続く。


 失って壊して、離れて間違えて、でもまた出会って取り戻してやり直したりもできる。人は一人。人は一人じゃない。そんな喜美子の人生を見せてくれた半年のドラマでした。すごいうまかった。終わって、でも開かれた最終回だった。


 キャストみーんな素晴らしかったねー。戸田恵梨香、ほわっと可愛かったり、物凄い気迫や狂気だったりを、こんなに見せてくれる女優さんになってるんだねえ。面白かった。凄い、ありがとう。楽しみました。

f:id:itiharu:20200328201908j:plain

幼馴染たち。仲良したち。友達っていいなー!みんな素敵だった素晴らしいキャストたちよ。ありがとう。

 さて30日からは「エール」ですって。窪田正孝主人公ですって。音楽の物語ですって。楽しみです♪

 

 あ、今日の桜。曇空。気温は生温いような一日。

昨日の強風で散りつつありますねえ。

f:id:itiharu:20200328220059j:image

f:id:itiharu:20200328220111j:image

f:id:itiharu:20200328220120j:image

f:id:itiharu:20200328220132j:image