蛙の目借時

なんとなくなんでもなく

ごきげんよう

映画「ブロークバック・マウンテン」から今へ

 雨続きの中木曜日。買おうかなと思っていた本が、一番近くの本屋さんには入荷がない、とのことで、嗚呼~ま~そ~かもしれないな~とは思っていたけどマジか。

 とショックを受けてやっぱうちで映画見ることにした本日です。飲みながら。自宅で映画を見る楽しみとしては、飲みながら、ということがあります。映画館にもよく行っていますが、映画館では私は飲食はしないです。あ、映画館のためには飲食した方が利益上がるらしい、ということは認識してるので、時々、コーヒーだとかジュースだとか買ったりはします。けど映画始まる前に飲み切ってしまうね……。

 

 ともあれ。

***たぶん以下、いろいろネタバレ含んでいるかも。「ブロークバック・マウンテン」「ゴールデン・リバー」「ゴッズ・オウン・カントリー」「君の名前で僕を呼んで」あたり。多分。***

 

 このところ、私の中で、ジェイク・ギレンホール熱がひそかに高まっています。(知らんがな)なんとなく、「ナイトクローラー」のめちゃめちゃヤバイ感じが印象に残っているジェイク・ギレンホールなのですが。やっぱ名前を最初に記憶したのは「ブロークバック・マウンテン」ですね。嗚呼。

 そして、今年はというか最近、「ゴールデン・リバー」と「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」を立て続けに見たのでした。

 

 「ゴールデン・リバー」の映画化の話を知ったのはツイッターで、その時にめっちゃ興味ひかれたのは、インタビューで、ジェイク・ギレンホールが、西部劇じゃないけどカーボーイの役をやったことある。と、「ブロークバック・マウンテン」の名前を出してました。

 

 ちょ。マジか。おい、リズくんってば~~。(その後「ブロークバック・マウンテン」見たのかどうか、リズくんに聞いてみたい……)

 

 で、原作の本を読み(『シスターズ・ブラザーズ』)無事、フランス映画祭2019で「ゴールデン・リバー」を見て、すごく面白かったしよかったです。

 

 で。

 「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」も見まして。とってもよかったです。

 で。

 まあいろんなプロモーションしてるを見るにつけ、かっこいいなとか可愛いなとかいやいややっぱ目が怖いとかてきとーなことばっか言いやがってw とか、すっごく楽しませてもらっています。

 

 で。

 私はゲイ・ムービーに物凄く惹かれます。なので、「ブロークバック・マウンテン」が公開になった時にも見に行ってます。2005年なんですねえ。14年前か。

 今のように配信で気軽にみられるでもなく、今みたいに同じ映画に何度も通ったりもしてなかったので、見たのは多分当時一回きり。

 ツイッターとかもやってなかったですし。

 ほんと、今だから、もう一回見る、になった気持ちです。

 

 アマゾンプライムに入ったなーというのは知っててウォッチリストに入れてました。でも、ちょっと、結構、あんまり気軽に見るもんじゃないなあという気持ち。

 ググって知ったけどあれから14年かあ……。

 雄大な景色とか、馬に乗ってとか、いろいろとすごく美しい。やっぱ殊更に、二人きりでいる自然の中、というのが美しいですね。家族と暮らす都会、都会っていうかまあ、町の中、家の中の閉塞感とは対称的です。

 

 今見ると、嗚呼これが、いろんな賞とりまくったとかアカデミーにノミネートされたとか、それでも受賞はしなかったとか、すごく、わかる。

 ほんとつい最近では、ブロマンスというのはやめようよ、それはただロマンスなんだよ、と言ったりする言葉を聞きます。ジュード・ロウがいってたり、ジェイク・ギレンホールもいってたとかなんとか、それちょっと今ソース辿ったりはったりはめんどくさくてやらないですけど、まあ、私の記憶によればというめちゃめちゃ曖昧な話で申し訳ない。

 まだ、ブロマンスとか、ゲイ・ムービーだからどうこうっていうのはあって、それはまあそうなんだけど。けど、本当にただただ、恋する気持ち、好きになってしまう気持ち、とか、そこにわざわざ同性愛だからということすらもう、いいんじゃない、っていう風に、昨今はなってきてる、かなあ。どうなんだろう。

 

 「ブロークバック・マウンテン」は1963年の出会いから20年ほどにわたる二人の時間の映画です。同性愛は罪であり忌み嫌われ憎まれ差別され時になぶり殺しにされるようなものでした。病気とか異常とかいう扱いでした。禁じられた思いでした。

 だから彼らは、惹かれあったブロークバック・マウンテンでの思い出を持ちながら、「普通」であるところの結婚とか家族を持つとかいうことを頑張ります。

 でも、ままならない。

 

 多分それは、特にゲイ問題が絡まなくても、当たり前にあるそれぞれの人生、それぞれの物語です。気持ちのすれ違い。生まれそだちの違い。日常の中の苛立ちや子育てや家族絡みのうんざりのいろいろ。

 生活です。当たり前に、いろんなめんどうなことがあり、毎日がハッピーなばかりではいられません。そういうことを描いている。今見るからすっごくわかります。映画館で初見の時には、妻とか家族って二人の恋路を邪魔するやつーくらいに思ってたかもなんだけど、今見ると、すっごくわかります。ひと夏の恋の後の、生活とか日常とかを、こんなにも描き出している作品だからこそ、物凄いってわかります。

 

 そして二人は結ばれることはなく。ジャックは不慮の事故によって命を落とす。けど、イニスの幻想みたいなことから思うに、事故というよりは、もしかして同性愛差別の暴力によってなぶり殺しにされたのかもしれない、ということも、あります。

 イニスがジャックの家にお悔やみに訪れた時、イニスではない別の男の名前を言ってた、というセリフもあったので、もしかして別の恋に、ジャックは踏み出そうとしていたのかもしれない、というのも思われます。

 それでも。

 二人のかけがえのない思い出。ブロークバックマウンテン。あの時着ていたシャツを、ずっと持ち続けていたことを、知るのです。

 二人は恋しあっていた。特別な関係だった。けれどそれは誰にも秘密にしなくてはいけないもので、二人で牧場をやろうという提案に、イニスは絶対乗れなかった。

 それぞれに家族はあった。それぞれに子どももいた。それぞれに、それぞれの暮らしを大事にしようとは、していた。

 子どもの結婚を喜ぶ思いは嘘ではないだろう。イニスは娘の結婚式に、当たり前に不器用な父として参列するだろう。

 でも、心の中でどうしても殺しきれない、自分で自分にも認められない一番欲しいものがあった。家族じゃなくて、どうしても手に入らないと諦めなくてはいけないのに、どうしてもどうしても、忘れられない思いが、ずっと。ずっとずっとずっと、ずっと、あるんだ。

 

 去年ですね。「ゴッズ・オウン・カントリー」を見ました。(実はのむコレ前に字幕ないの覚悟でブルーレイも買ってたんだけど)

 

 2017年のイギリス映画。時代も国も違いますが。

 つまり、時代の流れをめちゃめちゃ感じたのでした。

 「ゴッズ・オウン・カントリー」も、カーボーイというわけではないけれども、羊飼いのために野宿して暮らす中で二人がひかれあい、ということが描かれます。その時期が終わって、離れ離れになるんじゃなくて、もっと一緒にいよう、っていうのを言った時に、それは結婚しようってことか? という会話になります。

 これがさ~~~~。

 今も、同性愛への差別も偏見もあるし、いろんなタイヘンなことがいっぱいあると思うんだけど、選択肢の中に、結婚して一緒にいる。ということが、ある、っていうのがねえええもおおおおおお;;

 それはあり得ない考えられない絶対無理、という世界から、それはそれでタイヘンかもだけどそういうのもあり得る、という変化を思うとね~~~~;;

 今「ブロークバック・マウンテン」見て涙が止まらないのは、ねえ。時代があともう少し違ったら、じゃあ二人で牧場を、っていうのはあり得ない夢ではないんだよっていうことを思ってしまうから。

 

 じゃあ結婚しよう、ってなって。二人で暮らし始めたとしても、やっぱりうまくいかないこともあるだろう。やっぱり無理かもしれないし、やっぱりわかれたかもしれない。別の人生を選ぶことになったかも。

 それでも、じゃあ一緒に暮らす、っていうことを選べるかどうかって、物凄い違いだ。「ゴッズ・オウン・カントリー」まで、きたんだなあ……。

 

 同じく去年見てドはまりした映画。「君の名前で僕を呼んで

 

 コールミーバイユアネーム、は、舞台は1980年代なので、同性愛は一般的には大っぴらに認められるものではありません。

 けれど、さすが2017年製作。同性愛云々じゃなくて、だただた本当に、恋した気持ちを大事にしなさい、と、認め見守ってくれる言葉が描かれます。

 「ブロークバック・マウンテン」ではただ二人きり、けれどその自分たちですら素直に認め合うことができなかった愛を、コールミーの世界では素晴らしいかけがえのない思い出として、自分たちも、見守ってくれる家族も、いるのです。あ、エリオの方だけ、だけど。オリヴァーは多分アメリカに帰ってからは結構いろんなことが辛かったんじゃないかなあと思う、けど。けど、映画の中では。実らなかった初恋、というのは、同性愛だろうが異性愛だろうか、そこは関係ないって感じです。ただただ、初々しい切ない美しい恋の世界でした。

 

 なーんかね。

 私が同性愛がどーこーとか、まあ単純にやおい好きとか自覚した10代のころから30年以上は立つのかねえ。時の流れとか、ほんっと、やだもう私年よりだな!って思ったりするよ。すごい。生きてきてると時の流れを感じる。びっくり。

 

 「ブロークバック・マウンテン」に衝撃を受けた後に、ヒース・レジャーのジョーカーにあまりにも衝撃を受けまくって震えた後に、彼の早すぎる死があり。

 ジェイク・ギレンホールは、ナイーブなカーボーイの若者から、なんか怪演する感じの俳優となり。いやまあ、ええと。どうなの? ジェイク・ギレンホールって。(発音聞いてるとジレンホールって感じ?)ハンサム枠? ちょっと違うよね?? どーなの。

 わかんないけど。ほんとわかんないけど。リズくんに、その映画でも僕たちみたいなケミストリーはあった? って聞かれて、んー、と、答えずに見ろよってだけ言ったジェイク・ギレンホールの心中ってどうなの。と、めちゃめちゃ想像せずにはいられないんだよ。

 まだキャリア始めたばかりで、ああいう役で映画で共演して、賞関係もいっぱいあって。ヒース・レジャーと仲良しだったのかとかどうかとか知らないけど、けど。

 それは格別な映画で格別な日々だったと、妄想させてください。

 ちょっと、キアヌとリバー・フェニックスのこととかも、勝手に連想してしまう。まだ若くて、共演して、一方が若くして亡くなって。格別な映画で共演で仲だったと、妄想させてください。

 もちろん全部*個人の勝手な妄想です*なんだけど。

 俳優たちが、その人生の一部分を、見せてくれたのだと、思う。思いたい。

 そしてそれが、フィルム、映画という光と影の中に永遠に閉じ込められているのだと思う。かえがえなく美しい。

 映画って本当に素敵ですね;;

 終わり。